● 先逝く不幸をお許し下さい。









いつものこと。
その行為。
それが俺に多大なストレスを与えてるとも知らず。
あいつはただ自己完結。
終わってる。
何もかもが。



鏡を覗き込んだ。
そこに映し出された顔を見て。
もう駄目だという事に気が付いた。
あー死のうかな。
そう思った。
だから。






寝台に押し倒された。
「ギギナ、俺のこと嫌い?」
「貴様頭がとうとう逝ったか」
「じゃあ好き?」
小首を傾げて可愛らしく聞いてみる。
ちなみにそんな俺を見てギギナは特大級の苦虫を噛んでその味と触感にヤバそうな時のような顔をした。
見たこと無いけど。
今度料理に混入してみようかな。
出した時点で殺される方に一票で俺の独占勝利やったね。
「死ね」
思っていた通りの返答でむしろつまらなかった。

「うん、じゃあ死ぬ」

ギギナがピシリと固まるのを感じたが、まぁどうでもいいし。
枕下から剃刀を取り出し、頸動脈に当てサッと引いた。
笑顔で、

「ばいばい」

なんて言いつつ。
景気良く舞い上がる血に、白皙の美貌が歪んで。
「馬鹿がっ」
俺の首を抑えながら、治癒咒式を高速展開発動させる。
寝台の上でそれはまるで首を絞められているようで。
「貴様・・・何を考えてる!!!」
ああ傷が塞がってしまった。
上からギラギラした目で射抜かれる。
ああ生きてる。
思わずへらっと笑ったら俺の首を捕んでいる手に力が籠もり、抜けて。
竜に対面しても揺るぎないギギナの精神が。
・・・動揺?
ギギナが俺の行動に動揺しているだなんて!
「何って」
思わずくつくつ笑って、白い手に俺の手を重ねる。
そのまま締めてしまえよ。

ギギナ。
ギギナ。
ギギナ。

俺は。

「お前のことだけだよ」

だからお前以外を考える前に死なせてくれよ。
そうしたらきっと。

「ギギナだけ」

あはははは。
ギギナが俺の目を覗き込んだ。
俺の視界いっぱいにギギナの瞳。
寒い季節の月のような瞳が。
その鋼の目に見たことのない色が浮かんだ。
けれど見たことがある色。
あれはそう。

数時間前。
鏡の中に見た。



そう。

俺の、目。
俺の目の中。



絶望の色。



まるで。

まるで親を見失った子供のような顔をして。
ギギナの手から緩く力が抜けた。
そのまま覆い被さってくる。

「ガユス…いなくなるな」

笑いが止まらなかった。






遅いんだよもう。










ギギガユ。
もう、なにもかもが。
どうでもよくなって。
ばいばい。







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