● 気狂い=さようなら。









「くすくす」



「何を笑っている」









この人殺し。









言外にそんな声が聞こえた。



笑いを収めて、見知らぬ男の顔を覗き込む。



「さっき名乗った名前、ニセモノでしょう?」



男の顔色が変わる。



「貴方は何を心配しているのですか」



僕にはもう殺す手段なんて無い。



ただあるのはこの厄介な目だけ。









「・・・・・・・・・」









男は無言になって、ただ食事の乗ったトレーを置いて出て行った。



薄ら笑いを浮かべて男を見送る。









あの男は二度と来ないだろう。









「くすくす」









ただ嗤う。



Lのいないこの世界を。



竜崎の消えた世界をただただ。









スピーカーに音が入る。









「いい加減にしてください」









「いいじゃないか。僕はヒマなんだ」



退屈で仕方が無いんだよ。



「だったら、ニア。キミがここへ来て、僕の相手をすればいい」



「貴方がそれを嫌がった」









それを聞いてまた笑いがこみ上げてきた。









「何ですか」



少し不審そうな声。









「今はキミが来ても怒らないよ。むしろ会いたいくらいさ」









くすくすくす。









「だってニア、キミはとても竜崎に似てるから」



竜崎の代わりにしてあげる。









少しの間の後。









「さようなら」









ブツン。と音を立てて。









スピーカーが切れた。









笑いが込み上げる。



狂ったように笑いが止まらない。









止まらない。










ニアと月(キラ)。
死神の目を手に入れても、何をしても、あの人の名前は分からぬままに。
ただ牢獄にて。気が狂うまで。
ひたすらひたすら。







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