● 幸せになるための殺人。
「・・・・・・なぁ、竜崎」
「はい」
「僕、今不機嫌なんだ」
「そのようですね」
「ははは。そうなんだよ。寝不足なんだ僕は」
誰かさんのおかげで。
「だから思ったんだ」
「はぁ」
「お前がいなくなれば、僕はかなり幸せぢゃないのかって」
「それは即物的ですねぇ」
「ふふふ。即物的即物的。そうだね即物的だ」
「・・・何です。月くんらしくない」
「とりあえず、だ。妥協案を提示してみようか」
「妥協案ですか」
「ああ。平和的に話し合いからだ」
「まず、手始めに。僕の寝所に忍び込むな」
「無理です」
抱けないぢゃないですか。
「第二に。僕の半径五メートル以内に入るな」
「無理です」
アナタを近くで眺めたいです。
「第三に。僕に話しかけるな」
「無理です」
愛を囁かなくては。
「第四に。僕の視界に入るな」
「無理です」
キスしますから。
「最後に。お前、消えてなくなれ」
「無理です」
私以外、誰がキラを追うんですか。
「ははははは。無理。無理無理無理、無理!お前、そればっかぢゃないか」
「無理ですから」
「妥協案の意味がない」
「というか、今のはどうやっても妥協案になりえませんが」
明らかに命令形でしたし。
「しようがない」
「・・・月くん?」
にっこり笑って、手近の花瓶を掴む。
「死ね。ストーカー」
「・・・月くん、さすがにそれはマズイです」
「お前がさっきの妥協案を呑めばそのマズイ事態とやらは回避される」
「無理ですって」
「ぢゃあ、死ぬんだな」
「いや、ですから・・・」
「大丈夫大丈夫。お前が死ねば僕は幸せだ。たとえ殺人罪で捕まってもお前さえいなければこの世は天国」
「そこまで言いますか」
「さ、遠慮せずに逝け逝ってしまえ」
「わ、わ、わ・・・月くん、落ち着いて」
「ふ、ふふふ・・・落ち着けると思うか」
「それ、そのまま振り下ろしたら、私死にます」
「大丈夫。ふふ、打ち所が良ければ苦しまない」
にっこり。
「月くん、そんな素敵な笑顔をどうして寝所ではしてくれないのですか」
「頼まれてもしないよ」
何かを考えるように、がりりと爪を噛む竜崎。
「月くん、愛してます」
「黙れ、変態」
「汚らわしい暴言を吐きまくるその口も」
「喋るな、蛙」
「重たい花瓶を私に打ちつけようと震えながら持ち上げているその腕も」
「煩い、痴漢」
「私を魅了して止まないその細い腰も」
「だ、だま・・・」
「私にしか見せないその醜く歪んだ顔も」
「あっ!ちょっ・・・こ、こらっ!近寄るなったら・・・!う・・・ぅわっ!!!」
「愛してます」
ガコンッ・・・ゴロゴロ。
床に押し倒された月の頭上で、花瓶が転がっていった。
「だからお前、嫌いなんだよ」
「はぁ」
次は青酸カリに挑戦しよう。
アーモンド臭たっぷりの。
Lと月(キラ)。
いつも竜崎を殺そうと企んでいる月。
けれど、いつもヒントを残してる。
竜崎でないLなら殺すけれど、Lでない竜崎を殺す気はないから。
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